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●"Do Communications!" 2 〜「思春期vs思秋期」〜

 前回の連載、子どものために良かれと思い結局彼等のチャンスを奪っているというお話しの続きとして『思春期と思秋期の対決』について書きたいと思います。
 思春期とは、子供の身体から大人の身体へと発達を遂げる時期です。特に性的な成熟による身体の変化や、必ずしも一定ではない身体各部の発達スピードなどは彼等を当惑させます。自分と同年代のアイドルと自分を引き比べて、似ていればほっとし、似ていなければ悶々とし、“親に似てこんな姿になってしまった”という怒りが親への反抗という形で出てきたりします。
 思春期は身体の変化に加え、物の考え方もより高次で抽象的になってきます。その結果何かと理屈っぽく、親の言うことをを批判し、親の行動や考え方を非難するようにもなります。こうして、様々な変化を体験しながら、彼等は『私は一体何ものか、どのような存在なのか』というアイデンティティをつくりあげていくわけですが、実はこれは今ひとつ不明確で不安定な、彼等自身にも説明し難いプロセスでもあるのです。
 この時期、丁度親の側は思秋期とも言われる時期を迎えます。成人期には40歳〜60歳台の最初の5年間に不安定な時期が訪れると言われます。このような時期に、親が築いてきた価値観や習慣に子どもが様々な疑問や批判を投げかけることは当然親の内的な動揺をつのらせます。夢や希望や理想、可能性を持って進んでいく子どもに対して、親は、若き日の自分の理想や目標と現在の自分の姿との比較、人生の後半に目を向けなければならない現実、自分の人生の再評価など、子どもとは全く逆方向の課題に直面しなければなりません。これを子どもに理解してもらうのも中々難しいものがあります。
 こうした怒濤の時代とも言われる思春期の子どもが持つ成長と自立への要求は家族構造を維持しようとする親の要求と対立し、親子の衝突は増え親は防戦に苦労します。子育ての過程で家族が最も大きなストレスを感じる時期とも言われる所以です。まずは今こういう時期なのだということを理解した上で、親子間のストレスや緊張に対応するための、子ども時代とは異なる新しい家族間のルールを作っていく必要があるでしょう。         

(関西学院大学社会学部 専任講師 川島惠美)

TSU・NA・GI第2号(1999/12/20発行)より