TSU・NA・GI

●"Do Communications!" 14
〜一番近い他人だからこそ〜


 1月の中旬から、ちょっとユニークな子育て講座にかかわっています。どんなところがユニークかといえば、まず第1に、ご夫婦で、つまりパートナーと一緒に参加することが基本になっているという点です。子育て講座と言えば、平日の午前中にお母さん達が集まって…というイメージが強いのですが、あえてこの参加条件がついています。これは、ユニークさの2点目とも関係するのですが、連続5回を通じてのテーマが「かかわり」となっていることにあります。つまり、ちゃんとかかわることが子育ての基本だという考え方に立ち、各回、自分自身と、パートナーと、地域と、そしてもちろん子どもと、それぞれとのかかわりのあり方をテーマとして、これまたユニークなゲストスピーカーのお話に刺激され、参加者同志がかかわりながら体験的に学べるようなしかけがなされています。ですから、まずは一番近い子育ての仲間としてのパートナーと、ちゃんと向き合う=かかわってみることから始めましょうというわけです。第3点目として、講座と講座の間に、各自でトライしようと思う「私のかかわり目標」というのを立て、チェックシートに結果を記入して持参し、講座の始めにみんなで分かち合うという宿題(!)まであります。
 初日の朝に奥さんに言われて訳もわからずついてきたというご主人も含め、9組ほどのカップルが参加されています。彼らは、夫婦で参加してこられるという段階で、すでに「うちの夫はとても参加してくれない」というご夫婦とは違う関係性があるともいえるでしょう。けれど、受講者の言葉で印象的だったことは、「日々を共に過ごしていながら、いかに体験を共有化できていないかを痛感した」というものです。物理的に一緒に過ごしていても、そこで起こっていることに対してのお互いの感じや考えのやりとりを疎かにすると相手に対する自分の思い込みばかりになってしまい、いざと言う時「言ったつもりと聞いたはず」状態のすれ違いに愕然とするということでしょう。これはどんな人間関係においても言えることですが、やはり夫婦という一番近い他人同士だからこそ、かなり意識しないといけないことなのかもしれませんね。自戒もこめて…。

(関西学院大学社会学部 専任講師 川島惠美)

TSU・NA・GI第2巻第10号(2001/2/25発行)より