TSU・NA・GI

●「中高生日記」 1 〜修学旅行に行って〜

 修学旅行で僕らは5泊6日で長崎に行きました。その旅行で一番心に残ったことは、下平作江さんという語り部の被爆体験のお話を聞いたということです。
 原爆投下の直前、作江さんはお姉さんの言いつけで空襲警報が鳴り止んでも防空壕に残っていました。そのことが生死の境でした。空襲警報が鳴り止んだ後、Fat Manという名の原爆が長崎市内に落下したのです。落下した原爆は約半径1km以内を熱風と爆風で包み込みました。熱風は人を炭のようにし、また、爆風は人を吹き飛ばして壁にたたきつけ、あらゆるところに死体が散乱したそうです。作江さんはその死体の中を潜り抜けて、自宅へ向かいました。その途中でお姉さんの遺体を、家でお母さんの遺体を見つけ、生きていく希望を失いかけたそうです。生き残ったお兄さんもすぐになくなり、妹さんも様々な理由から列車へ身を投じてしまいました。
 この様に悲しい運命に振り回されながらも作江さんは現在に至るまで必死に時代を生き抜いてきました。そして、今本当は言いたくない過去をこれからの時代の為に、またその様な過ちを繰り返さない為にも、僕らに伝えてくださっています。現代を生きる僕らの世代の子どもたちがそういう過去を知り、その過去を深く考えていかなければならないと思います。その為に僕らは作江さんの思いを伝えていかなければならないのではないでしょうか。

(関学中学部三年 山尾寿利)

TSU・NA・GI第1号(1999/11/20発行)より