TSU・NA・GI

●「のじまのつぶやき」 16 〜小さな宝物〜

 先日、行われた「飛びだせ!春キャンプ01」でのこと。キャンプ初日、子どもたちがキャンプ場内を巡り、場内に隠された宝を探すという企画。スタッフが、朝からキャンプ場に入り、183個のプラスチックボールに入った宝を場内に隠した。ある宝は落ち葉の中、ある宝は木の枝の間。子どもたちは、様々なところに隠された宝をくまなく探していた。そして、結果発表。子どもたちが見つけた宝は、合計181個だった。それからスタッフは、残された2個の宝を回収に行った。
 そこで事件は起きた。置いていたはずの場所に宝がないのだ。それからスタッフはあわて始める。配置したボールをすべて回収することが、キャンプ場と約束されていた。しかし、置いていた場所にない。もしかしたら転がってどこかへ行ってしまったのかもしれない。それとも、誰かが持っていってしまったのかも知れない。手の空いているスタッフを総動員しても、結局2個の宝は見つからなかった。
 そして、その夜、スタッフは対策を考え始めた。様々な可能性が検討され、様々な対策が議論された。時間はもう午前4時を過ぎていた。「とりあえず、何としてでも探しだそう」翌日、彼らは起床時間を早めて、早朝に全員で宝探しを始めた。朝7時すぎ、1個の宝は見つかった。しかし、その日、残る1個の宝は見つからなかった。また、その夜も話し合いがあり、翌朝も捜索を行う。そして、最終日の昼前、子どもが偶然に最後の1個を発見した。
 企画の段階で、紛失の可能性は、大きく議論されていた。それでもなお、学生たちは、この企画を実行した。それだけに、その責任は大きい。この組織では、学生が自由に発想し、自由に活動している。そのなかで、彼らは自由であることの恐ろしさを学びながら、自由が自律とともにあることを身をもって体験していく。春のキャンプも無事、終わった。彼らが企画した宝探しは、自分自身の宝探しだったのかもしれない。

特定非営利活動法人ブレーンヒューマニティー代表
能 島  裕 介

TSU・NA・GI第3巻第1号(2001/4/20発行)より