●「のじまのつぶやき」 18 〜「なんとなく」の変心〜 今日はある新人スタッフの話をしよう。彼は現在、大学1年生。入学式の時に配られた当会のビラを見て、「なんとなく」当会に入ってきた。彼はいくつかのキャンプに誘われたものの、結局、サバイバルキャンプに参加することになった。 話を聞くと、彼はこれまでキャンプというものをしたことがなかったらしい。ほんとに「なんとなく」当会に入ってきたのだ。その証拠に、事前の下見キャンプでは、着替えすら持ってきていなかった。もちろん、子供と接したこともなく、調理をしたこともなければ、火をおこしたこともない。おまけに野菜類がまったく食えない。 そんな奴が、どうしてこの会に来たのか疑いたくもなるが、なぜか彼はキャンプに来た。しかも、もっとも長期のサバイバルキャンプである。そこで、彼は様々なことを教えられる。火の付け方や野菜の切り方、そして仲間と共に汗を流すこと。 6日目の朝、彼はつぶやいた。「なんだかこの生活に慣れてきました」確かに、キャンプスタッフの生活は過酷である。朝6時に起きて、日中、仕事に追われ、深夜はミーティング。就寝が2時、3時になるのも日常である。「なんとなく」やってきた彼が、日に日にたくましくなっていく。 最終日、キャンプ最後の食事。その終わりに彼はテーブルマスターを務めた。食事が終わり、彼が食後の挨拶をする。「明日の今頃は、もうみんな家にいます。でも、この6日間の出来事はきっとわすれないでしょう。」「10年後、2001年の夏何してた?と聞かれてもはっきり答えられると思う。」 この夏、彼の心にはなにが刻みつけられたのだろうか。いうまでもないが、私たちの顧客は子供たちだ。しかし、同時に学生スタッフたちも子供たちから多くを教えられている。彼らは、一銭のお金をもらうこともなく、むしろ自分たちで参加費を支払いながら、キャンプに来ている。「なんとなく」かもしれないが、一歩を踏み出し、動くことの中で確信に変わりこともある。 この夏、100人以上のスタッフが、様々な活動を行う。彼ら、彼女たちの「なんとなく」が、大きな気づきに変わることを願わずにはおれない。 |
特定非営利活動法人ブレーンヒューマニティー代表 能 島 裕 介 TSU・NA・GI第3巻第3号(2001/9/5発行)より |